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聞こえの支援を

 9日(土)、中野・杉並健康友の会さん主催、「いつまでも聞こえる耳を」と題した学習会に参加させていただきました。講師は、慶應義塾大学名誉教授で現在はオトクリニック東京院長の小川郁医師。2年前に続き、2回目の開催です。

 

 これまで区議会で、聞こえの問題に対する区の認識や難聴と認知症の関係を問いながら、補聴器助成制度の必要性などを取り上げてきました(初めての質問は2019年6月。議事録はこちらから確認することができます)。区は、当時、「特に加齢性の難聴については、認知症リスクとの関係性なども指摘されており、それぞれの方の聞こえの度合いに合った補聴器を使用することはコミュニケーションの確保のためにも有効」との考えを示しています。しかし、区としての助成制度創設には後ろ向きです。

 

 2021年6月、中野区議会に対し、「高齢者に対する聞こえの支援及び、補聴器購入への助成を求める陳情」が2176筆の署名とともに提出されました。

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(主 旨)
1.区民健診の検査項目に、65歳以上の高齢者に対する聴力検査を加えてください。
2.補聴器を必要とする高齢者に区独自の補聴器購入のための助成を実施してください。
3.補聴器購入の公的補助を求める意見書を国に提出してください。

(理 由)
日本は世界に類のないスピードで超高齢社会を迎えています。70歳以上の高齢者の半数は、加齢性の難聴と推定されています。難聴になりますと家庭の中でも、社会においても孤立しやすく、人との会話などが減少しがちになり、認知症との関連性も指摘されているところです。しかし、加齢性難聴はゆっくりと進行するため、本人には自覚しにくく、気づくの
が遅れがちです。難聴者や高齢者が生活の質を維持し、向上していくためには、自分の聞こえの変化を知ることができる聴力検査を毎年受診できる制度と、難聴の進行に合わせ、できるだけ早期に補聴器を使用することが必要です。補聴器は、数万円から高価なものまでありますが、保険適用でないので全額自己負担となり、年金生活者にとっては大きな負担です。都内では、中央区、新宿区をはじめ14区村が高齢者に対する補聴器購入の支援事業を実施し、港区議会では2020年2月、補聴器購入の公的支援を国に求める意見書を全会一致で採択しています。高齢者が人とのつながりを楽しみ、生活し続けるために、上記主旨の実現を求めます。

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 当時の厚生委員会審査の様子は、こちら(議事録)からご覧いただくことができます。「他の自治体がどうなっているか知りたい」との意見が複数の議員から出され、この時は区への資料要求をおこない、陳情は「継続審査」となりました。その後、10月の委員会であらためて陳情審査がおこなわれましたが、残念ながら、主旨1および2は賛成少数で「不採択」となりました。厚生委員会で陳情に賛成したのは、残念ながら私のみでした(陳情審査の最後に賛成討論をおこないました)。自民党/立憲民主党/公明党/無所属の近藤区議・石坂議員が反対しました。その際の陳情審査の様子はこちら(議事録)から確認することができます。なお、主旨3については、全会一致で「採択」されました。

 

 この時、陳情の主旨1および2を「不採択」とした議員からは、「補聴器助成の効果や認知症予防効果については検証してつかんでいるか」「補聴器購入後、継続して使われているか」「使いにくいことが課題」などがあげられましたが、昨日の学習会で小川医師は、「その理由は間違っている」とはっきり述べました。その上で、「難聴が認知症の危険因子であることは間違いない」「補聴器は、購入して装着すればすぐに聞こえるわけではありません。少なくとも3カ月〜半年間のトレーニングが必要のため、購入助成とその後の支援をセットで考えることが大切」と強調されました。

 

 その点では、2021年4月から、あらたに始まった板橋区の制度がとても有効です。板橋区の助成制度では、「補聴器購入アフターケア証明書」の提出を要件としています。この証明書は、1週間から10日に1度、計4回の調査結果をチェックリストに基づいて販売店が記録することになっています。例えば、「包丁で刻む音、シャワーの音など、生活上の色々な音を聞いてみる」などの宿題を出して、次回に確認する仕組みです。板橋区では、2019年5月に区議会へ提出された陳情をきっかけに、議論が積み上がったとのことです。その後、陳情は所管委員会にて計7回の継続審査となったようですが、最終的には、2021年1月に全会一致で「採択」となりました。そして、同年4月に区としての制度がスタートしました。そういう意味では、中野区でももっともっと議論を積み重ねる必要があると考えます。

 

 また、2022年4月からは、あらたに港区で高齢者補聴器購入費助成が開始されました。板橋区同様に、港区の制度も、専門医や補聴器技能者とともに、購入前からのアフターフォローまでがセットとなった支援となっています。また、助成額上限が13万7千円であることも非常に画期的です(港区の制度はこちらで詳しく紹介されています)。港区が加わったことで、2022年4月現在、東京23区で高齢者への補聴器購入支援などを実施している自治体は15区となりました。2019年6月時点では、23区中8区だったので、ここ数年でも実施自治体が大きく増えたことになります。

 

 なお、この問題については、日本共産党都議団が繰り返し、都議会で取り上げてきました。東京都には、高齢者のための福祉の補助として、【高齢社会対策区市町村包括補助事業】と呼ばれるものがあり、自治体が制度を実施する場合には、東京都の補助が2分の1活用できます。この補助メニューに【その他】の項目があり、その項目を使えば補助が活用できますが、非常にわかりにくく、当時、8区のうち3区しか東京都の補助を活用していませんでした。しかし、都議団がこの項目をきちんと聞こえの支援として位置付けることや、都の補助制度が活用できることを自治体にきちんと周知することなどを求め、今では、殆どの自治体が東京都の補助を活用しています。

 

 小川医師は講演の中で、「聞こえの問題は、ただ聞こえがよくなるだけではなく、大切な仲間との会話が楽しくなったり地域での活動参加が活発になったりすることで、高齢期が豊かになる」ということも強調されました。音楽や映画などの趣味が継続できることも大切で、社会的孤立やうつを防ぐ上でも効果がある、また、難聴が軽い段階から補聴器を利用することやリハビリも含めたフォロー体制を整える大切さについても、重ねて述べられました。

 

 聞こえの問題は、高齢者だけにとどまりません。幼少期からの支援がとても大切であること、聞こえの問題への理解を深めることの重要性について、2022年2月の区議会質問で取り上げました。その際の質問と答弁は、こちらのブログにまとめています。区からは大事な答弁もありました。引き続き、中野区での制度創設、聞こえの支援充実へ力をあわせていきたいと思います。