昨年末の本会議・一般質問に続き、今日の予算特別委員会・総括質疑(一問一答)で「生活保護ケースワーク外部委託問題」を取り上げました(昨年の本会議での、一般質問と答弁概要はこちらに掲載しています)。沢山の方の傍聴、ありがとうございました。とても、心強かったです。
生活保護法第一条では、「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長する」という目的が記されています。つまり、「必要な保護と最低限度の生活の保障【①保護の決定・実施】」と「自立を助長【②自立支援・適正化】」の2つです。この2つは、「生活保護の各扶助を活用した経済的な給付」と「ケースワークという対人支援」に対応をしています。
生活保護法第十九条4項では、【①保護の決定・実施】として、「その管理に属する行政庁(=福祉事務所長)に限り委任することができる」と記されており、事実上、民間団体への外部委託はできません。そのため、当然ながら、保護の開始、保護費の減額、保護の廃止・停止などの保護の決定行為についても同様です。一方で、ケースワーカーが行うべきケースワーク業務については、それをより充実し効果的に行うために、就労支援など専門的な知識や技能をもつ外部団体等に委託すること、戸籍の徴収、銀行などへの資産調査、正規の家庭訪問ではない「安否確認」や「見守り」など、ケースワークの補助的・補完的な業務のみ、非常勤職員等が行う場合に許されています。(あくまでも、補助・補完的な業務に関する委託は認められています)。
そのため、【②自立支援・適正化】については、就労支援などの自立支援業務を委託化する自治体が2005年から増えていますが、全国的にも色々と問題が生じています。例えば、大阪市で問題となっていることについて、こちら(2021年1月28日付しんぶん赤旗)を、ぜひ、お読み下さい。
繰り返しになりますが、【①保護の決定・実施】は、いまの法律では外部委託することはできません。しかし、【②自立支援・適正化】業務を装い、それを隠れみのにしながらケースワークの本体業務を外部委託することがいくつかの自治体で行われており、中野区でもそれがおこなわれているのではないかということを、昨年、取り上げました。
今回の質疑の論点は、
(1)生活保護法、社会福祉法との関係について
(2)偽装請負の可能性について
(3)人員・雇用体制、専門性の確保について
の3つです。今回は総括質疑(一問一答)のため、昨年の本会議質問に対する答弁で、区が否定した(1)(2)の点を中心に取り上げました。
現在、中野区では約6600世帯が生活保護を利用しています。その約半数、3300世帯が65以上の高齢者です。この高齢者の方々の約半数1650世帯が、【高齢者居宅介護支援事業】という名で委託され、65才以上の生活保護利用者の相談・援助などが行われてきました。かかわる方は、高齢者ケースワーク専門員(以降、委託専門員)と呼ばれています。つまり、中野区で生活保護を利用されている方の約4分の1世帯、高齢者の約2分の1の方々を委託専門員が担当していることになります。
この委託専門員の方々が所属するのは、【生活保護課の高齢者保護係】です。高齢者保護係は全体で20名の構成で、このうち14名が委託専門員、6名が区の職員です。区の職員は係長(査察指導)除き、5名の正規ケースワーカーという構成です。
この間、各専門家の方々と共同して調査を重ねながら、その一つひとつの実態をもとに質疑をおこないました。パネルとして用いた情報開示請求資料などを添付し質疑の柱を、こちら(PDF)に掲載しました。あわせて、ご覧下さい。
区の答弁は非常に苦しいものでした。ケース記録・援助方針・家庭訪問、どの点をみても、事実上、ケースワーク業務が外部委託されており、生活保護法・社会福祉法違反は明らかです。また、偽装請負も事実上、グレーが黒になりました。
政府は2019年末に「生活保護におけるケースワーク業務の外部委託化」方針を閣議決定し、今年度中に必要な措置を講じ、法改正に要する業務についても外部委託を可能とする方向で検討しています。令和3年度中に結論を得るという、外部委託に対し積極的な方針を示しています。政府は、「ワーカー業務の負担軽減」などを業務委託導入の理由にあげていますが、委託によって負担軽減にはならず、偽装請負が横行することは、中野区での実態もみても明らかです。
十分な人員体制と専門性の確保は欠かせず、そもそも、予算をきちんと充てる分野です。新自由主義のもと、このケースワークの民間委託は小泉政権時代からのアイデァで、公務労働の人員抑制、非正規化、外部委託推進の結果です。働く委託職員の雇用条件も悪化する懸念があります。政治のあり方、生活保護行政の構造的問題そのものが問われています。