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本会議質問報告①(生活保護行政について)

 11月27日におこなった本会議一般質問の全文については、11月28日のブログに掲載をさせていただきました。今回は、その質問に対する答弁の一部を複数回にわけてご紹介致します(私のメモに基づき記載)。なお、正式な議事録は1か月程先となります。

 

1回目は、生活保護行政の高齢者居宅介護支援事業についてです(〇=質問 答弁は赤字で記載しています)。

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 政府は2019年末、「生活保護におけるケースワーク業務の外部委託化」方針を閣議決定し、今年度中に必要な措置を講じ、法改正に要する業務についても外部委託を可能とする方向で検討しています。令和3年度中に結論を得るという、外部委託に対し積極的な方針を示しています。

 

 中野区では、2010(H22)年度から生活保護利用の65才以上の方を対象に、「高齢者居宅介護支援事業」の名でケースワークの一部外部委託を開始しました。当時、23区では初めての委託事業で、事業開始の経過と必要性については次のように説明をしていました。「生活保護受給者が増加する中、ケースワーカーの支援業務が精神疾患を持つ方や若者の支援に追われ、安定した高齢者世帯への支援がやむを得ず後回しになる実態がある。そのため、高齢者世帯の生活状況・健康状態の把握、年金の調査などの業務を検討した結果、相談や見守り、提出資料作成の補助業務などは民間の事業者による実施が可能である判断をし、業務を委託して支援充実やサービスの適正化を図ることとした。(中略)この事業を始めることで、高齢者以外の受給者の生活状況把握や自立援助などのケースワーク業務に力を入れることができるようになると考えている」というものでした。

 

〇そこで伺います。この事業について、現在も区としては同じ目的で事業を継続していますか。答弁を求めます。

 

答弁:高齢者居宅介護支援事業委託は2010年度の事業開始当初と同じ目的で現在も行っている。

 

 この事業は、「中野区高齢者居宅介護支援事業実施要項」に基づきおこなわれており、対象者は生活保護利用者で65才以上の方のうち、中野区福祉事務所長が本事業を実施する必要があると認める者とされています。2010年の開始当初は約3200万円の委託費で600世帯を対象とし、翌年度には委託費を5600万円、対象世帯も1200世帯といずれも倍増させました。さらに、委託開始3年目(2012年度)には、委託費6100万円・1350世帯とさらに増やし、2014年度以降は7400万円を超える委託費で、1650世帯の高齢者を本委託事業の対象にしています。

 

〇生活保護を利用している65才以上の高齢者のうち、おおよそ何%の方が本委託事業の対象となってきたか、事業開始年度と2019年度について、それぞれの割合について伺います。

 

答弁:事業開始年度の2010年度は22%、2019年度は45%。

 

 今年度は、14名の高齢者ケースワーク専門員(以下、専門員)が、1650世帯の方に年2回の訪問をおこなっています。専門員の構成について、委託仕様書ではア~ウの3つの区分が示されています。【ア.介護支援専門員】【イ.介護福祉士、社会福祉士、社会福祉主事任用資格のいずれかの資格があり社会福祉法に規定される社会福祉事業で実務経験のある者】【ウ.その他、区が適当と認めたもの】となっています。【ウ.区が適当と認めたもの】では特に資格の有無は問うていません。今年度、14名の専門員の資格所有の内訳は、どうなっているか。社会福祉士は4名のみ、専門資格がない方は5名となっています。

 

 先月、本事業の対象となっていた70代男性のAさんについて、相談が寄せられました。Aさんは長い路上生活から中野区内の支援団体のサポートに繋がり、現在はアパートにて1人で生活をされています。Aさんは倹約家で、月々の保護費から少しずつ貯金をしていました。そのAさんに対し専門員は、今年7月に支給されたアパートの更新料について、「Aさんはお金があるようだから更新費用は返還してください」と述べたそうです。その後、専門員の名前でAさん宅に約10万円の更新料を返還するための納付書が送られてきたため、Aさんは相当追いつめられてしまいました。Aさん宅を定期的に訪問している医療関係者が疑問に思い、今回の問題が発覚しました。早速、調べたところ、本来は返還する必要のないものということが判明しました。Aさんの異変にサポートの方が気づくことがなければ、Aさんは毎月の保護費から生活を切り詰め、心身ともに追い込まれながら、約10万円を返還することになっていたと思います。また、同じ専門員はAさんに対し、「そんなにお金があるのだったら、特別定額給付金も要らないのでは?」とも言い、Aさんは自分が給付金を受け取ってよいのか、悩んでしまったと言います。

 

〇これは絶対にあってはならないことです。生活保護法第56条では、「被保護者は正当な理由がなければ既に決定された保護を不利益に変更されることがない」と定めています。私はこの問題が判明した際、もしかするとこれは氷山の一角に過ぎないのではないか、これまで11年間、約16000世帯の方が本委託事業の対象になってきましたが、他にも同じような方がいた(いる)のではないかとさえ感じています。今回、なぜ、このようなことが起きたのか、また、生活保護法第56条と照らしどうなのか、委託している区の責任の3点について、あわせて答弁を求めます。

 

答弁:生活保護法第56条の条文にある通り、正当な理由がなければ既に決定された保護を不利益に変更されるものではない。今回の事例では、支給済みの住宅更新料の返還を求めたことについては、福祉事務所として事実把握に誤認があり、誤って返還請求をしてしまった。既に返還請求を取り消し、御本人には担当課長から謝罪を行っている。

 

 また、生活保護法第19条4項では、「保護の実施機関」が「保護の決定及び実施に関する事務の全部または一部をその管理の属する行政庁に限り、委任することができる」と規定されています。そのため、委託仕様書でも、「保護費の返還・徴収に係る事務」は「区が実施する業務」とされており、委託の範囲からは外されています。公務員の生活保護ケースワーカーにある権限や決定権は、当然ながら、この委託事業の専門員にはありません。

 

〇しかし、Aさんへの返還決定通知書や納付書、送付された封筒には専門員の名前が書かれており「保護費の返還・徴収」の決定と、実際に返還を求める事務、つまり「保護の決定及び実施」そのものを委託先の専門員が直接行っている点において、生活保護法第19条4項の根幹に違反しているのではないでしょうか。また、委託仕様書の委託内容の範囲からも明らかに逸脱していると考えます。ケースワーカーと専門員の名前を併記することが通例となっているのか。あわせて伺います。

 

答弁:通知への専門員の名前の記載については、利用者の利便のために専門員の名前をケースワーカーの名前とともに記載している。保護の決定は区職員によって行っており、生活保護法第19条4項に違反しているとは考えていない。

 

 現行生活保護法の立法担当者(当時の厚生省保護課長)であった小山進次郎氏は、第19条4項の趣旨について、「福祉事務所において行われるところの本法関係の現業業務(つまりケースワーク業務)と保護の決定、実施の権限との行使とを有機的に一致することをもって本法の実施、運営の効率的能率化を期し、その円滑、適正を計るということ」と説明しています(「改訂増補生活保護法の解釋と運用」300頁)。つまり、適正に保護を実施しようと思えば、ケースワーク業務と保護の決定・実施業務を一体的に福祉事務所が担う必要があり、ケースワーク業務だけを切り分けて外部委託することは法の趣旨に反します。

 

〇また、社会福祉主事の現業員以外にケースワーク業務をおこなわせている点では社会福祉法第15条および19条にも違反しているのではないでしょうか。伺います。

 

答弁:社会福祉主事でない専門員については、現業員には区の職員を配置しており委託事業者である専門員は福祉事務所の現業員ではないため、社会福祉法第15条及び第19条には抵触をしていないという認識。

 

 また、これらの業務について福祉事務所の職員から委託先の専門員に直接の指示があり事務を行っていた場合は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)の違反、すなわち「偽装請負」と認定される可能性が高くなります。委託仕様書の委託内容(1)の②には、「生活保護受給者の求めに応じ、相談・助言を行う事務(生活保護法第27条の2に係る事務)」が含まれています。通常のケースワークは殆どが、この第27条2に位置付けられ、利用者のニーズを把握し、必要に応じて生活保護の給付をおこなうためのヒアリングや助言・調査になります。また、相談や助言で終わるわけではなく、例えば、利用者さんから体調が悪いとの訴えを把握した上で医師の診察を受ける必要性があれば、それを助言し医療券を発行し医療扶助を提供することになります。このように、27条の2に基づく支援は、具体的な給付決定、つまり、行政処分を常に意識しなければならないため、実際に必要な決定をする可能性を常に秘めています。委託仕様書では、「保護の決定を伴うものを除いた事実確認等の業務」と記されていますが、例えば、「収入申告書や賃貸契約書など保護の決定に必要な書類の徴取」という項目が委託内容に含まれており、これは実際に保護決定に必要な調査事務となります。

 

〇そのため、こうした調査は決定権を有する委託元(中野区福祉事務所長)と常に連携し、指示を得ながらでなければ業務を進めることはできず、この点でも偽装請負の疑いが非常に濃厚となります。見解を伺います。

 

答弁:偽装請負の疑いについては、保護の決定を伴う調査は区の職員が直接行っているため、委託の対象としていない。収入申告書や賃貸契約書などの事務的な書類の受け取りは、区職員から直接指示が必要でないため事業者に委託を行っている。そのため、本件委託は偽装請負ではないという認識。

 

 区は、本事業を開始する際、事業者選定にあたっては、「行政機関等から受託して生活保護受給者や生活困窮者の相談支援業務をすでにおこなった実績ある事業者から選定」すると説明していました。あらためて調べたところ、導入年度のみ指名競争入札でしたが、2年目から4年目までは業者指名の随意契約、5年目からは5年間のプロポーザル契約となりましたが、「NPO新宿ホームレス支援機構」という同じ事業者が11年間、本事業を受託し続けています。

 

〇この事業者は、今年5月、国のホームレス支援事業を巡り不正が発覚した案件を主導していた疑いがある事業者です。当NPO理事長は、「NPOの資金繰りが厳しく、不正で受け取った分のお金を事務所家賃や職員給与にあてていた」と東京新聞の取材に答えています。区は、今回の案件を把握されていましたか。伺います。

 

答弁:新聞で報道された内容については、法人からの報告があり把握をしていた。

 

 さらに、「NPO新宿ホームレス支援機構」の事業報告書を調べてみました。H29年度、中野区からの委託契約額は1年間で7425万円ですが、同支援機構の事業報告書では、本事業の経常費用合計は約2841万となっています。差額の約4583万円は経常増減額として記載されています。経常費用はすべてが人件費関係ですが、単純に、この費用を専門員14名で割り返すと、1人の専門員あたり1年間で賞与も含め約200万円、1カ月約16万9千円となります。事業報告書では福利厚生も含んでの額となっており、専門員自身の処遇はまさにワーキングプアです。さらに、驚いたことに、同年度、同支援機構が中野区の所管課に提出した参考見積書では、人件費と明らかにわかる部分は6250万円となっており、事業報告書の約2841万と大きな乖離があります。事業報告書記載の金額が事実とすれば、本事業の受託が事業者にとって儲けの事業となっていることも明らかです。

 

〇この実態について区の認識を伺うとともに、まずは事業者に説明を求め、区としても調査をおこなうべきです。答弁を求めます。

 

答弁:専門員の処遇について、専門員は受託法人に雇用されており、その処遇については法人と雇用される者との間で締結された雇用契約による。ただ、法人の事業報告書については、今後確認していく。

 

 区はこうした経過も踏まえ、委託事業者、委託事業自身についても見直すべきです。生活保護におけるケースワーク業務の外部委託化は、生活保護法の基本原理である国の責任に反し、必然的に偽装請負と官製ワーキングプアを生み出すことに繋がります。ケースワーク業務の外部委託がもたらす先を、今回のAさんのケースが如実に示しています。福祉事務所の実施責任の空洞化、生活保護利用者の権利侵害、また、貧困ビジネスそのものではないでしょうか。これは、まさに生活保護行政の構造的な問題です。

 

 現在、中野区では地区担当ケースワーカー1人あたり平均で155名の利用者を担当しており、負担は相当なものになっています。国からの監査でも、実施体制の整備について指摘されています。外部委託によっても、人員不足は解消されていないのが現状です。非常に残念なことに、中野区は悪い自治体事例として何度も紹介されています。そもそも、ケースワークというのは高い専門性が求められます。また、相談者に寄り添い、粘り強い働きかけや信頼関係を構築することは欠かせません。

 

〇ケースワーカーの業務過多と専門性欠如という問題への対応は、生活保護問題対策全国会議でも指摘されているように、外部委託や非正規化の推進でなく、正規公務員ケースワーカーの増員と専門職採用などによる専門性の確保、調査事務や徴収事務等の簡素化や効率的な生活保護システムによる負担軽減によっておこなわれるべきです。見解を伺います。

 

答弁:生活保護ケースワーカーについては、適切な支援を行うためには専門性と人員の確保や効率化が必要であると考えている。効率的で適切な生活保護行政の進め方については、引き続き検討していく。

 

 冒頭に述べた、政府がすすめるようとしている「生活保護におけるケースワーク業務の外部委託化」方針は撤回すべきであり、中野区の現在の状況についても総括・見直しを求め、次の質問に移ります。

 

コメント

 現在、生活保護利用者の65才以上高齢者の2人に1人が本委託事業の対象となっています。かなりグレーな部分が多く、現在、引き続き、調査をすすめています。質問の最後でも触れていますが、生活保護のケースワークは高い専門性が求められます。外部委託や非正規化の推進ではなく、正規公務員の増員と専門性の確保こそ求められます。

2016年以前の記事は旧・ホームページでご覧ください。