本会議一般質問と答弁概要について、2回目は、生活保護行政の改善・拡充についてです。
〇が質問、→赤字が答弁の概要です。
次に、2、生活保護行政の改善・充実について、まず、(1)制度活用を周知することについて伺います(9問)。
長期化するコロナ禍、2度目の年末年始が過ぎました。今回の年末年始も、都内では、支援団体や有志スタッフ、民間ボランティアの方々が連日、様々な場所で食糧支援や生活相談などをおこないました。各場所、1度目の年末年始を上回る方が訪れたとのことです。昨年11月の生活保護申請件数は全国でおよそ2万1千件となり、前年同月より10.6%増えたことが厚労省のまとめで明らかになりました(2月2日公表)。申請件数が前年と比べて増加したのは7カ月連続で、生活保護開始となった方も前年同月比で9.1%増え、再就職が難しいことなどから生活が苦しく追いつめられる人が増えていることがみてとれます。
〇コロナ前の2019年度と2020年度、2020年度と2021年度それぞれについて、生活援護課で受けた生活相談数、生活保護の受理件数について、増減率とあわせ答弁を求めます。
→生活相談の件数は、2019年度は3625件、2020年度は4350件であり、20%増であった。2021年度は12月までの相談件数が2977件であり、2020年度12月までの3325件と比較すると10%減少している。生活保護の受理件数は、2019年度は765件、2020年度は918件であり、こちらも20%増であった。2021年度は12月までで587件の申請受理があり、2020年度12月までの689件と比べ、こちらは15%の減少となった。
〇食糧支援などを訪れる方が絶えないことや、私たちに寄せられる様々な相談の状況を鑑みると、実際には生活保護基準以下で生活をされている方はさらに多数と想定されます。これまでも求めてきましたが、「生活保護の申請や利用はみんなの権利」と、ポスターなどを作成し区のお知らせ版や公共施設への掲示など、積極的に発信すべきです。また、短い時間の動画などで相談の流れをイメージしやすくする工夫なども必要ではないでしょうか。現在の検討状況と今後の手立てについて答弁を求めます。
→生活保護の申請は国民の権利であることを明示、ためらわずに相談するよう呼びかけるポスターを作成中であり、今年度中に区内に掲示する予定である。相談の流れをわかりやすくお知らせする方法などについては、他自治体の事例なども情報収集し、取り組んでいきたい。
1つの手段として、生活保護のてびきをもっと目にふれやすくすることを昨年9月の決算特別委員会総括質疑で求めましたが、11月からホームページにも掲載いただいたことは評価致します。より手に入れやすく、目にふれやすくする手立てを重ねて要望致します。
次に、(2)扶養照会について伺います。
生活保護を利用する上で扶養照会が大きな壁となっていることについても、繰り返し指摘してきました。実際に扶養照会によって金銭的な援助が可能だった割合は、2019年度、中野区ではわずか0.1%でした(申請765件、保護開始した729件中、約4分の1の186世帯で扶養照会を実施。金銭的援助を受けた件数は1件)。
〇生活保護申請数、保護開始件数、扶養照会を実施した件数、そのうち金銭的支援に繋がった件数について、2020年度と、2021年度12月までの実績について伺います。
→2020年度は生活保護申請件数は918件、保護開始の件数は889件であった。扶養照会は186件についておこない、金銭的支援に繋がったのは1件であった。2021年度は12月までに保護申請件数は587件、保護開始件数は563件であった。扶養照会は56件についておこない、金銭的支援に結びついたものは無かった。
この間、扶養照会廃止を求める世論が高まり、厚労省は昨年3月、扶養照会の運用を変更する通知を各自治体へ出しました。その中身は、親族に問い合わせがいくことを拒否したい方は、申請時にその意思を示し、一人ひとりの親族に対し扶養照会をすることが適切ではないことや扶養が期待できる状態にないことを説明すれば、実質的に扶養照会をとめることができるというもので、今年度4月1日から運用されています。
〇現場ではこの通知がどのように周知され、相談に来られた方に対してもきちんとアナウンスされているのか伺います。
→扶養照会の運用変更は、生活相談係や保護開始事務をおこなう担当の係だけでなく、生活援護課内で全員に周知した。相談者に対しては、生活相談や保護開始時の調査で扶養照会について丁寧に説明した上で聞き取りをおこなっている。
この運用変更は一般的には殆ど知られていません。首都圏の自治体議員グループが、福祉事務所が設置されている首都圏1都3県の全自治体から生活保護のしおりを入手し、扶養照会がどのように説明されているかを精査する調査を実施しました。その結果、今回の運用変更について触れている自治体は少数にとどまっています。
一方、文京区では昨年9月、生活保護の案内に「DVや虐待などの被害があり、親族に居場所を知られたくないといった特別な事情がある場合には扶養照会を見合わせることもできる」との記載を追記し、港区でも記載の改善がされています。
〇中野区でも、生活保護のてびきやホームページなどに、今回の厚労省通知を反映させた記述にあらためるべきです。答弁を求めます。
→生活保護のてびきは現在、改訂作業中であり、現在の扶養照会の取扱いについて記載し、ホームページに掲載することを予定している。(※2月下旬、改訂されたものが中野区ホームページに掲載されました)
全国の自治体の中には今回の通知に従わないだけでなく、法律を捻じ曲げて親族による扶養照会を強要する自治体もあります。中野区内に活動拠点をおく「一般社団法人つくろい東京ファンド」は、生活保護問題対策全国会議の方々とともに、扶養照会に関する申出書を作成しました。この申出書は、厚労省の通知内容をそのまま落とし込んでいます。昨年末、滋賀県議会でこの申出書の活用について質問をした際、県の担当部長は「自分の意志をうまく伝えられない方などが福祉事務所に対し自分の意思を伝える上でこうした様式(申出書)を活用することもひとつの有効な手段と考えられる。今後、各福祉事務所へ情報提供していきたい」と見解を示しました。
〇扶養照会は福祉事務所職員にとっても多大な時間と労力を費やす業務です。こうした申出書の活用は一つの有効な手段と考えますが、区の見解を伺います。
→これまでも扶養照会についての申出書が申請者から提出されることがあったので、受け取り、その後の支援などの対応に活用している。生活相談や保護開始の調査の中でも丁寧に聞き取りをおこなっているが、個人の状況に応じて対応することが生活保護業務の適正化に繋がると考えている。
次に、(3)職員体制の強化と育成について伺います。
社会福祉法では、都市部での生活保護世帯80に対し、ケースワーカー1人の配置を標準数として定めています。しかし、中野区ではケースワーカー1人あたり平均で150~160世帯にも及び、この間、取り上げてきた高齢者居宅介護支援事業を実施している高齢者保護係に至っては1人あたり330世帯という状況です。ケースワークの肝となる家庭訪問で生活実態が把握できなければ、適切な支援をおこなうことができないことは周知の通りです。
〇昨年の決算特別委員会で指摘した高齢者居宅介護支援事業を実施している世帯には、今年度からようやく訪問計画が策定されました。個別の支援プログラムを活用しているため、国の実施要領に基づき年1回のケースワーカー訪問が位置づけられていますが、1月末現在の家庭訪問状況について、答弁を求めます。
→今年度、高齢者居宅介護支援事業を実施している世帯に対するケースワーカーによる家庭訪問は1月末現在で229件であった。
ケースワーカーの配置は標準数を保っている自治体もあり、行政の姿勢が問われます。中野区では、ケースワーカー不足が常態化をしており、今後、10年間で20名のケースワーカー増員計画が示されていますが、10年待たずに前倒しも含めて検討すべきであることを重ねて要望致します。
体制強化とともに、多岐に渡り専門性が求められるケースワーカーの育成も欠かせません。現在、中野区では分業制をとっているために、ケースワーカーの育成に課題があるとも伺っています。また、利用者さんや支援団体の方を通じて、明らかなモラルハラスメントやパワーハラスメントでの対応がされているケースについての情報も寄せられています。非常に残念であり中には耳を疑うような対応もありました。一方で、本当に親身に寄り添い素晴らしいケースワークをされているケースワーカーも中野区には沢山います。その姿勢には私も学ばされます。
〇利用者さんは担当ケースワーカーを選ぶことはできないため、やはり、専門性の発揮のための育成が重要です。ケースワーカー育成の観点で、現在の課題と今後の対応について、見解を伺います。
→世帯のケースワーカー業務全てを一人のケースワーカーがおこなっているのではないことと、訪問を担当する各地区のケースワーカーの担当世帯数が平均で150世帯と多いことにより、各世帯の状況を把握し、個別の援助方針の策定およびきめ細やかな助言指導の実施に課題があると認識している。しかし、現在、一時扶助や収入認定など、保護費の計算および給付を担当する専門の係を設置しているため、それらの事務処理を遅滞なくおこなえている点は分業制の利点である。人員については、今後10年間で20人を増員することを予定しており、今後、より良い生活保護業務ができる体制について検討していきたい。
(4)この項に最後に、その他で、生活保護世帯の大学等への進学について伺います。
現在の法制度で子どもは、高校卒業後は働くことを前提としているため、原則、生活保護を利用しながらの大学等の進学は認められていません。そのため、進学する場合には世帯分離をおこなうことになります。例えば、両親と子ども1人の3人世帯で生活保護を利用している場合、そのお子さんが大学等に進学する場合には、同居を続けていても、両親と子どもは別世帯として世帯分離をすることになります。当然ながら、その分、保護費は減少し、分離をしたお子さんは生活扶助の対象外となるため、生活費や学費などはお子さんが自分で工面することになります。2018年の法改正で、世帯分離をしても住宅扶助は減額されなくなり、進学準備給付金として、転居しない場合には10万円、親と別居して転居する場合には30万円が支給されることになりましたが、生活保護世帯の子どもが進学を諦めざるを得ない状況は続いています。
〇中野区では、進学準備給付金を利用している方はどの程度か。2018年からの3年間の実績を伺います。
→2018年度は15件あり、すべてが転居しない場合の10万円の支給、2019年度は転居しない場合の10万円が8件、転居を伴う場合の30万円が1件、合計9件だった。2020年度は11件あり、すべてが転居しない場合の10万円の支給であった。
神奈川県横須賀市では、昨年、両親からの虐待で避難する女子大学生から生活保護の申請を受けましたが、大学生は対象外となっているため、新年度、同じ境遇の大学生に対し、生活保護と同程度の金額を支給する独自制度を設けることを表明しました。等しく学ぶ権利を保障するためにも、厚労省が運用をあらためることが必要であることを述べ、この項の質問を終わります。