中野区内には、現在8か所の地域図書館があり、中央図書館とあわせ9館体制です。区は今後、新設の区立学校内に地域開放型図書館を配置する計画です。今議会に提出された議案は東中野と本町の両地域図書館を廃止し、中野東図書館と地域開放型学校図書館3館を設置するものです。地域図書館は身近で気軽に利用できる場所として大きな価値があります。東中野と本町の両図書館の年間個人貸出冊数は37万冊を超え、地域になくてはならない場所です。一方、地域開放型学校図書館は学校内を不特定多数の方が出入りすることでのセキュリティ面やコロナ禍での感染症対策面で学校現場や保護者からは不安の声があがっています。今回の方針は区が設置した検討会や区民からの意見を踏まえたものではなく、見直すことが必要でした。本会議において、党区議団を代表し小杉区議が反対討論をおこないました。以下、全文です。
中野区立図書館条例の一部を改正する条例に対する反対討論
2020年10月13日
第79号議案、中野区立図書館条例の一部を改正する条例に日本共産党の立場から反対討論を行います。本議案は本町図書館と東中野図書館を廃止し中野東図書館を新設すること、3つの小学校に中央図書館の分室として地域開放型学校図書館を設置する内容となっています。議案に反対する理由を以下3点述べます。
1つに、長年地域住民に利用されてきた地域図書館である本町図書館と東中野図書館を廃止する点です。地域図書館は住まいや職場など身近な場所にあることに大きな価値があります。子育て中の親子や高齢者、障害者など移動に困難を抱える方々でも気軽に利用できる場所となっていることが魅力となっています。
2018年度では両図書館の登録者は8357人、年間個人貸出冊数は37万冊を超えています。昨年の秋に開催された「今後の図書館サービスのあり方検討会」においても、委員から「本町図書館が廃館になると、弥生町1丁目や本町5、6丁目が(現状の図書館圏域の)800m圏内ではなくなる」「新図書館に行くかどうかのアンケートをしてみたが、保育園児の足では遠すぎていけないという回答であった」など、廃止によって図書館の利用ができなくなるなどとの指摘がありました。また、「鷺宮新図書館の建設の際に、近くの江古田・上高田図書館を廃止するということがおきないか心配である」との意見もありました。小中学校の施設整備についても見直しがされようとしています。建物が存在する限り、老朽化は常に課題であり、次々にその対象は増加します。施設自身の長寿命化を考えるべきではないでしょうか。本町図書館と東中野図書館については長寿命化のための診断を行い、必要な増築を行い、図書館として存続させるべきです。先日の子ども文教委員会でも、図書館での利用者アンケートでも「廃止しないでほしい」との意見が多くあったと報告されましたが、それらは氷山の一角です。
2つに、区が設置した検討会や区民からの意見を踏まえたものではない点です。3月に区は今後の図書館サービスのあり方について、区民や学識経験者等を交えた検討結果を踏まえ、今後の図書館サービスの基本的な方向性及び主な取り組みを定めたとしています。しかし、昨年秋に開催した「今後の図書館サービスのあり方検討会」での検討内容や総意を踏まえたものとは到底いえません。そこでは委員から「区内の学校はどこも狭い。無理して地域開放型学校図書館を作るべきではない」「地域開放型学校図書館を一律に導入すべきではない。それは地域図書館をつぶすために提案された経緯がある。いったん白紙に戻すべき」「この程度の広さであれば貸し出しのスポットに過ぎない。費用も配置ももったいない。利点欠点を整理すべき」など、地域開放型学校図書館への否定的意見が多く出されました。これまでも地域図書館や地域開放型学校図書館については、区民からの意見聴取は十分に行われてはきたとはいえません。
3つに、区が掲げる5年後に実現する「まちの姿」にも矛盾している点です。先述の「今後の取組(考え方)」にある目標の4つ目「良質な区民サービスを提供する図書館」の「10年後に実現するまちの姿」には、「誰もが簡単かつ快適に図書館サービスを受けられるまちを目指す」と掲げています。住まいや職場から身近で気軽に利用できる場所である地域図書館を廃止することは、区が描いている、現在から5年後に実現する「まちの姿」にも大きく矛盾しているといわざるを得ません。いまこそ、図書館の目指す姿を区民と共有し、意見を交わしながら、区民が学び充実した人生を送れるよう、図書館の内容の拡充と体制の再構築を行うべきではないでしょうか。
よって、本町図書館と東中野図書館については図書館として存続させ、図書館の9館体制として運営するとともに、地域開放型図書館の設置は中止することを求めて、本議案に対する反対討論と致します。