本会議質問③
4、次に、聞こえのバリアフリーについて伺います。
先月、日本共産党都議団が「難聴と補聴器に関するアンケート」に取り組み、504人の方から回答をいただきました。その中では、「「聞こえないけど、なんとなく相槌を打っている」「サークルの中でまわりの声が聞こえづらくなった」「広いところでの話し合いには参加しなくなった」など、聞こえに対する不安の声が多く寄せられました。
難聴が認知症の危険因子の1つであることは、2017年に開かれた国際アルツハイマー病会議での発表や厚生労働省の新オレンジプランでも指摘されています。団塊の世代が後期高齢者となる2025年、認知症の人は予備軍とあわせて1400万人になると言われています。補聴器が必要な難聴者も、今後10年間で、1600万人になるとも言われています。難聴になると、周囲からの情報量が絶対的に減少します。その結果、先程、ご紹介したようなことが増える中で会話がうまく成立しないという経験を繰り返し、周囲との関りを避けるようになり、コミュニケーション・交流の機会が減少することにもつながります。
そのことが、精神的健康にも影響を与え、認知機能の低下やうつ傾向を引き起こすことにもつながることが指摘されています。65才以上の2人に1人が難聴でなんらかの形で生活の質の低下につながるという実態もあります。難聴を「医療」のカテゴリーで捉えて補助制度がある欧米と比べ、日本では「障害者」のカテゴリーで捉えて助成対象を絞り込んでいるため、補聴器所有率が圧倒的に低くなっています。そこで伺います。
●こうした指摘や実態がある中、「聞こえのバリアフリーの重要性」についての区の認識・見解を伺います。
●日本では、両耳で平均聴力が70db以上など、かなり重度の難聴でなければ障害認定による補聴器購入の補助が受けられません。これは、非常に大きい声か補聴器を用いないと会話が聞こえない状態で、聞こえても聞き取りには限界がある状態です。一方、国連の世界保健機構(WHO)では、中等度難聴の41db以上から補聴器使用が推奨されています。現段階では、加齢性難聴を治療する方法はないと言われています。そのため、難聴が進行してからの使用ではなく、自分にあった補聴器をなるべく早く使用することが重要とされています。こうした聴力低下がみられる方への早期からの補聴器使用の重要性についての認識もあわせて伺います。
答弁
→ご指摘のように聴覚に関するバリアの解消は社会にとって重要である。特に、加齢性の難聴については、認知症リスクとの関係性なども指摘されており、それぞれの方の聞こえ度合いにあった補聴器を使用することは、コミュニケーションの確保のためにも有効と考える。
補聴器は非常に値段が高いため「本当は両耳で必要だけど片方のみにしている」「必要と感じるが、高すぎてなかなか手が出せない」という声も少なくありません。先に紹介したアンケートでも、補聴器を使用してみようと思う動機のトップは「購入費補助制度」でした。補聴器の現物支給や購入費補助など、補聴器に補助を実施している自治体は23区中8つ(中央・新宿・墨田・江東・大田・豊島・葛飾・江戸川)あります。この8つの自治体のうち、3つの自治体で東京都の補助制度を使っていることがわかりました。高齢者のための福祉の補助で「高齢社会対策 区市町村包括補助事業」と呼ばれるもので、この補助のメニューの一番下に「その他」の欄があって、「その他」と使えば補助を活用でき、東京都が2分の1を補助するというものです。ぜひ、こうした活用できる制度の情報収集などもおこないながら、中野区でも補助実施に向けて、前向きな検討を要望致します。
●加えて、聴力に関しての健診の重要性について伺います。加齢性難聴は、ゆっくりと進行していくため、本人自身が自覚しにくく、気がつくのが遅れがちになります。先にも述べたように、適切な時期に適切な補聴器使用につなげるためにも、早期発見が必要です。そのためには、聴覚検査が重要です。現在、中野区でおこなっている国保特定健診の項目に聴覚検査は入っていません。例えば、豊島区では65才になった際に無料で聴力検査を追加しておこなっています。北区では、500円と有料ですが、65才以上の奇数年齢の方に実施しています。ぜひ、中野区としても、健診メニューへ追加を検討してはいかがでしょうか。見解を伺い、この項の質問を終わります。
答弁
→国保特定健診については、国が健診の項目を定めており、その中に聴覚検査は含まれていない。新たな項目を追加するには、健診の有効性や各医療機関での検査の可否などを検討する必要があり、区としては国の動向を注視していく。なお、聴覚に不安がある方への対応については、従来より、かかりつけ医と耳鼻科専門医との連携により対応しているが、今後、区としても聴覚に関する区民への情報提供について検討していく。